第11章 ビター ✢R18
『お前んちの親、産婦人科の医者なんだろ?避妊できる薬、貰えばいーじゃん。』
親に直接言って緊急避妊ピルを出してもらうことは、うちの親子関係からして無理だった。
電車に乗って少し遠くの産婦人科に行き、薬を処方してもらった。
『彼氏……と、避妊を失敗してしまって……。』
大人に面倒なことを言われたくなくて、医師には嘘をついた。
これはほぼレイプなんだと、本当は解っていた。
それでもまだ私は、蝉川と自分自身を信じたかった。
『うぇっ……気持ち悪い……。』
急激に女性ホルモンを補充するアフターピルは、飲むととてつもない吐き気に襲われた。
副作用の不正出血と、生理周期も乱れた。
それでも、もし高校生で妊娠してしまえば…
親の職業柄、それが一番のタブーだ。
アフターピルが必要な機会は、三度あった。
三度とも、別の病院にかかった。
三度目の受診から数日たったある日。
『夢、話がある。座れ。』
こんな時ばかり予定を合わせて家に帰った父と母に、尋問された。
同県の産科医なんて、狭いコミュニティだ。
かかった医師から、私の情報は親にダダ漏れだった。
蜜浦なんて、珍しい苗字だから。
常に避妊具を持つことを、両親に強制された。
父は蝉川と会うことを禁じ、なんなら蝉川の親に会うとまで言い出したが。
結局、仕事の予定が合わないとかで、それには至らなかった。
他言は勿論、学校にも報告するなと釘を刺された。
県議である父のため、ことを大きくしないように。