第11章 ビター ✢
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私は、蝉川 大飛(せみかわ やまと)のことが好きだった。
サッカー部の中心選手である彼とは、2年生の時に同じクラスになって知り合った。
1年生の後半から親に言われて生徒会に入った私は、やりたくもない生徒会の仕事にやりがいを見出だせないでいた。
『蜜浦さん!それ運ぶよ!』
生徒会の行事の時、私を何度もフォローしてくれたのが彼だった。
『蝉川くん、サッカーの審判頼まれてるでしょ?
そっち優先して?』
『へーきへーき!1年に丸投げしてきたから!
蜜浦さんの手伝いしてる方が楽しいしさ!』
蝉川も、私のことが好きなんだと思った。
やりたくなかった生徒会だって、入って良かったとすら思った。
高校生になって初めての恋。
気分が高揚していた。
『期末マジヤバい。蜜浦さん、勉強教えてくんない?』
ちょうど一年前だ。
サッカー部のインターハイの予選が終わって、
期末テストが近付く6月下旬だった。
その日はテスト勉強期間で、部活や生徒会は休みだった。
『俺ん家くる?』
テスト勉強を一緒にするという名目で、蝉川の家に行った。
その日が……
私のハジメテだった。