第10章 わすれもの
「へへっ♪」
蜂楽は心から嬉しそうに笑ってくれた。
ほんのちょっとの嬉し涙を、眼に溜めながら。
「あ、夢ちゃん。なんか食べれた?風邪の時といえばアイスっしょ♪」
私が落とした袋の中をガサガサ探して、蜂楽はアイスを取り出した。
「パッピコ食べる?」
そういえば何も食べられてない。
少しお腹すいてきたし、時計を見ればもう午後3時。
「お茶にしようか。上がって?」
「あいあいさー♪」
体調が回復してきて良かった。
蜂楽の制服のズボンが目に入る。
この裾のロールアップが本当にいつも可愛いくて、クスッと笑える余裕も出てきた。
「何飲む?うち温かい飲み物しか置いてないけど。」
「へぇ〜!なんでなんで?」
「うちの親って医者でしょ?ふたりとも産婦人科医でさ。女の子は体冷やしちゃダメって教えで。
だから原宿で冷たいレモネード飲めて嬉しかった。」
「にゃるほどね。んなら、アイスなんて食べてへーき?」
「今日は廻からのプレゼントだから。特別。」
パッピコを半分に折って、蜂楽のと合わせた。