第10章 わすれもの
ふわっと口付けられた、優しすぎるキス。
眼を閉じて唇だけに集中する蜂楽につられて、私も眼を閉じる。
気持ちいい。
温かくて、柔らかくて、心地よくて、とにかく甘い。
蜂楽から貰ったビニール袋が、ドサッと床に落ちた。
指までが心地よさに酔って、袋を持ち続ける力がなくなったみたい。
「……知ってるんでしょ?俺のホントの気持ち。」
キスの後、上目遣いの角度をつけて、蜂楽は私をじっと見つめる。
“俺、夢ちゃんのコトだいすき。夢ちゃんがいなきゃ俺、マジで生きてけない。”
“……ん、知ってる。”
昨日、河川敷のところでした会話。
心臓がキュッとなって、顔が火照る。
「……うん。知ってる、よ。」
私、ズルかったよね。
初めてキスされた生徒会室でも、昨日の河川敷でも。
いつだって誤魔化して逃げて怖がって。
自分の気持ちを信じてなかった。
こんなに色々なことがあったのに……
いつも、あなたから与えてもらうばかりだった。
誰かを好きになることに、まだ抵抗があったんだ。
“支配の首輪”と“トラウマの鎖”に縛られた私は…
もう真に自由にはなれないと、どこかで諦めていた。
でもその“首輪”の鍵をしっかり掛けてしまったのは……
他ならぬ、私自身だったんだ。
だいじょーぶだよ、夢。
廻と、私で……鍵を開けてあげる。
「……私、廻が大好きだよ。」
やっと、最初の鍵……外せた。