第10章 わすれもの
「俺、ちゃんと夢ちゃんのコト考えてなかった。
女の子の気持ちも避妊も、一番大事なコト、理解ろうとしてなかった。ごめんね。」
「なんでっ……廻が、謝るのっ……。」
どうして?
昨日あんなに酷いこと言った私なんかに……優しくしてくれるの?
その優しさで……私はダメになっちゃうんだよ?
「俺、誰かを好きになったの初めてだから。
その好きって気持ちは、ちゃんと行動で示さなきゃダメだって気付いたんだ。言葉だけじゃなく行動でね。」
「……それは、私の方が、だよっ。廻のこと、すごく傷付けた……。」
“もしかしてヤリ逃げするつもりだった?”
醜い自分の台詞が、脳内で再生される。
「俺だって夢ちゃんを傷付けた。
“ハジメテじゃなくても気にしない”って言った。」
ぎゅっと抱き締められてて顔は見えないけど、
蜂楽の声は、泣くのを我慢しているように震えていた。
「……色々と気楽に考えすぎだよね。俺。」
「それが廻の、良いところでしょ?」
不意にハグの腕を緩められる。
「“忘れ物”は……スパイクだけじゃないよ。」
7割くらい瞼を閉じた蜂楽の眼が、
少し開いた唇が、
スローモーションで近付いてきて……
「あっ……ダメ、風邪うつるっ」
ゼロ距離からのキスを、私はかわせなかった。