第3章 デート(仮)
その後、逢坂くんに文芸部に誘われたけど、私は自分のバカがばれるのが嫌だから断った。
彼はちょっと悲しそうにしてたけど、週末に遊園地でデートすることで話は収まった。
なんでデートすることになったんだっけ。
彼の小説のヒロインのモデルだとか…まあいろいろ言ってたけどよくわかんない。
毎朝、彼が私の家の近くまで迎えに来てくれるので一緒に登校した。
意外と観てるテレビ番組とか似てるみたいで、ドラマやアニメの話で盛り上がったりした。
帰りは図書室で、授業の復習や宿題をしながら彼の部活が終わるのを待った。
バカがばれるのが嫌だったから一緒に勉強はしたくなかったけど、宿題でどうしてもわからないところが有ったから聞いてみた。
彼はとても丁寧に優しく教えてくれた。
スラスラとノートに書きつづられる綺麗な文字と彼の細く長い指。
私の身体の中がきゅうっとなった。
「…だから、こうなるんだよ。わかった?」
彼の優しい声が私に問いかける。
「…うん。わかった」
わかってないけど私がうなずくと、彼は満足そうににっこりと微笑む。
「いつでも聞いてね」
「ありがとう」
「じゃあ今日も一緒に帰ろうか。送っていくよ」
彼と並んで帰り道を歩く。
ほんのり染まり始めた夕焼け空。
制服の私たち。
青春そのものみたいで照れくさい。
「週末のデートのことなんだけど」
彼がちょっと遠慮がちに口を開く。
「えっ、あっデート。うん遊園地。行くんだよね」
「恋人同士っていう設定でお願いしたいんだけど」
「恋人同士…設定…」
「頼むよ。どうしてもヒロインの反応が知りたいんだ。僕の小説のヒロインモデルは君だからね。僕のためだと思って協力してよ」
「う、うん。私で役に立てるなら…」
…
彼の小説のためのデート。
冴えない女子高生の小説でも書いてるのかなあ。
でも私にとっては人生初のデート。
しかもあんなカッコイイ人と。