第11章 ラブ!
(イテテ…靴ずれしちゃったかな)
夕方、駅ビルをブラブラ歩いてると張り切ってお姉ちゃんに借りてきた5cmヒールのサンダルが足に食い込んで痛くなってきた。
「逢坂くん、ごめん。私、なんか足が痛くて。あのベンチにちょっと座ってもいい?」
ちょうどみつけたベンチを指差す。
「え?足が?というのはやっぱりあれ?あの…」
逢坂くんが心配そうに顔を曇らせる。
「靴ずれしちゃったみたい。大丈夫だよ」
ベンチに座って痛い方のサンダルを脱いでみる。
足の甲に血がにじんでいる。
足が前に滑って食い込んじゃったみたい。
「血が…大丈夫?」
血を見た逢坂くんが不安そうな声を出す。
「うん…近くにドラッグストアがあったような。バンソウコウ買いに行こうかな」
「僕が買ってくるよ。待っていてね」
一人でベンチに座っていると、情けなくなってきた。
張り切って大人っぽいカッコして、大人になったつもりだったのに。
カッコ悪いなぁ…私。
「大丈夫?ナンパとかされなかった?」
逢坂くんが心配そうな顔で戻ってくる。
「大丈夫だよ」
「キズパワーパッドと普通のとどっちがいいかな?」
彼が小さな袋を開けながら尋ねる。
「キズパワーパッドがいいかな。ありがとう」
傷が塞がれるのと、彼が横にいるのとでホッとする。
「帰ろうか。オンブしてあげるよ」
彼の冗談に私は吹き出す。
「ふふっ…無理だよ」
「大丈夫だよ。ゆめちゃんをオンブするぐらい」
彼が平然とした顔で返す。本気かな?
「いや、恥ずかしいって。こんなとこで」
一応、ちゃんと否定しておく。
「僕は君以外に何を思われたって平気だよ」
真面目な顔でそんなことを言う彼を見ていると、私もそんな気がしてくるけど…。
「…いや、スカート短いから。パンツ見えちゃう」
「…それは困るね」
彼は真剣に考え込む。
私は思わず笑う。
「大丈夫だよ、こんなの普通に歩けるって。キズパワーパッドも貼ったし」
「じゃあ…今日はひとつ手前の駅で降りてバスで帰ろう。バスを待つ時間はかかるかもしれないけれど、君の家のすぐ近くまで行くからね」
「うん!詳しいね」
「当然だよ?」
私は彼の手をしっかり繋いで歩いた。