第8章 いつも
家で机に向かって宿題をやるけど全然はかどらない。
ていうか全然わからない。
これ、逢坂くんに教えてもらおうと思ってたんだった。
あのまま図書室で待ってればよかったな。
いっそのこと本当に文芸部に入って部室で宿題やればすぐ教えてもらえるかな。
後輩の女の子にバカだってなめられるかな。
でも逢坂くんならきっとみんなに僕の彼女って紹介してくれるから…
バカだけど愛されてるのは私だもんねーみたいな。
…ってバカバカしい。
私って本当にバカだ。
逢坂くんにごめんねってメッセしようかな。
でも私悪くないし…。
「はぁ…」
私はモヤモヤを吹き飛ばしたくて、わざと大きくため息をつく。
ベッドの枕元に座っているクマくんのぬいぐるみが目に入る。
私はクマくんを抱き上げてベッドに座る。
「逢坂くん…ごめんね」
…
次の朝、重い気持ちを抱えて家を出る。
いつもの公園に彼は待っててくれてるかな。
いたらなんて言おうか。
いなかったらどうしようか。
考えがまとまらないまま歩く。
公園が見える。
彼はいつものように時計の柱にもたれて文庫本を読んでいた。
私はちょっと小走りで彼に駆け寄る。
彼が顔をあげる。
「おはよう」
私は考えないままいつものようににっこり笑って声をかける。
彼も本を閉じ、優しく微笑んだ。
いつものように。
「おはよう」
「ねぇ、なんの本読んでたの?」
「ん?これはね…」
いつものように私達は学校に向かった。