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秘められた宿命

第1章 出会いと宿命


秀吉の帰りをまつ桜。


秀吉様に命を懸けているが恋とはまた違う。

家族のようなそれ以上のような、恩人なのだ。


秀吉様が帰られたと聞いた時はいつも胸をなでおろし安堵した、
今回は奥州の政宗殿も一緒に戦に参戦したらしい。


安土の城では祝杯の宴が開かれる事となり、お勝手に駆り出された。


政宗殿は料理に長けていることから、名高い武将にも関わらずお勝手を仕切っていた。


台所では女たちがきゃぁきゃぁと黄色い声を上げながら政宗殿に話しかけている。



政宗殿の蒼い瞳を見ると見透かされた感じがしてい居心地が悪い。

政宗殿は下女にも振る舞いを変えず甘く男前であった。



私は任された仕事だけを黙ってしていた


政宗「そろそろいいんじゃないか?ひっくりかえせ」と私の背後から呼びかけてきた


必要以上に驚き、拒絶反応が出てしまった


政宗「・・・悪い。びっくりさせたか?」



桜「すみません。」


政宗「頃合いだぞ、ひっくり返せ」


魚を焼いていただけなのに、異常に緊張して冷や汗が流れる。


いつもの作業だ。


ふと横を見ると、既に政宗殿はいなかった。


普段は手伝いなどしない女中なども馳せ参じているこの状況はなんだ。


(気持ちが悪い)


政宗殿によく見られたいのか…浅ましいというか、浅はかというか。


それでも普段よりも化粧の濃い女たちを見てこのように影響するのかと冷静な目で見ていた。


心の中で、他の女たちをさげすんでいた所に


政宗「いい具合だ、食べて見ろ」

と箸を差し出され、反応しぱくっと口を開けて食べてしまった。


目の前にほかほかの黄色い卵焼きがあった。


(うまぁ…なにこれとろける だしも効いてて)


桜「おいひぃです」


政宗は「そうか、ではあいつらに食わしてやるか。」とニコニコしながらその皿を持って広間へと消えた。

(あいつら喜ぶぞ?)とその顔を想像してワクワクしながら皿を運ぶ姿になぜか顔がカーッと熱くなった。





髪を結うのも、食事の支度をするのも、作業でしかなかった。

命じられた事をうまくやる。

次ぎはもっとうまくやる。

次ぎはもっともっとうまくやる。

向上心こそあれ、相手がどんな顔をするのか?どう喜ぶか?など考えた事もなかった。


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