【R指定】リクエスト・コミュ企画短編集【原作色々】
第10章 【コミュ企画】【鬼滅の刃】彼女の推し【時透無一郎】
半年前に彼女が出来た。
今日は週一ペースで会っているその子の家で、彼女の推しの俳優が出ている映画を観ている。
「かっこいいなあ〜! クールな見た目と毒舌の融合加減が絶妙なんだよね」
「僕、ホント君の好みがわかんないよ」
「ん?そう?」
「女の子ってさ、優しい人が好きなんじゃないの」
「まあそう言う子は確かに多いかもね。お母さんにも結婚するなら優しい人が一番よーってよく言われるし」
君のお母さんは多分正しいんじゃない?
僕、時透無一郎と上條仁美は同じ大学の先輩後輩の仲から彼氏彼女の仲に進展した。
知り合ったきっかけは、と言うと双子の兄である有一郎だ。
兄さんのバイト先 —— 居酒屋「ひょっとこ」で彼女は週三回働いている。
「こんばんはーいらっしゃいませ。有一郎くんの弟さん? ホントそっくりだねー。やっぱり一卵性なの?」
「…そうだけど。君、誰?」
「あ、ごめんね。色々聞いちゃって。私、ここで働いている上條仁美です」
これが僕と仁美の出会い。
何で出不精の僕が一人で居酒屋に来たかって言うと、それはこのお店の名物がすっごく美味しいって兄さんがしょっちゅう話題に出すから。
「店長は真夏でもひょっとこの面を外さないし、週末休もうもんなら髪振り回して大ヘラ持って追いかけ回す変わり者なんだけどさ。あの人が開発したひょっとこ焼きが絶品なんだよ」
だから無一郎にも一回食べてみて欲しい。
これをバイトがあった次の日の朝、毎回言って来るもんだから、全然興味なかった僕も段々その名物が気になり始めたってわけ。
兄さんは料理も上手だし、美食家だ。
その彼が興奮して勧めて来るんだから本当に美味しいのだろう。
因みにこれはどうでも良い情報なんだけど、その変わり者の店長は鋼鐵塚さんって言って、三十七歳の独身らしい。
「お待たせしました、ひょっとこ焼きです。焼いても良いかな?」
「うん、作り方わかんないからお願い」
まだ混雑していない店内の座敷。時間は十七時半を過ぎたあたりだ。
暇つぶしでスマホをいじっていたら、頭にひょっとこの面を被って紺の作務衣(さむえ)姿の仁美が注文した品を持って来てくれた。