第11章 【コミュ企画】 【WB】優しい先輩ってやつ【梶蓮】

「梶。」

商店街をを少し離れた繁華街の入口で、俺は梅宮さんに呼び止められた。

ヘッドフォンをしていた為、肩を思い切り掴まれる。




「今帰り？遅いね。」

時刻は高校生がふらつく時間では無い。

俺はヘッドフォンを取ると、機嫌が良さそうに笑っている梅宮さんを見上げた。



「………柊さん家の帰りです。」

俺はこんな時間に梅宮さんが何処で何をしていた？

そんな野暮ったい事は聞きやしない。

これだけご機嫌なら、どうせあの女の家の帰りなんだろう。



「俺は仁美さんの家の帰り。」

「……あー…そうっすか…。」

心底どうでもいいので、俺はすぐに飴を口の中に入れる。

そうでもしないと、ニコニコ牽制してくる梅宮さんに、余計な事を言ってしまいそうだ。



「……あの女…仁美さん昨日見ましたよ。なんか桜と一緒でした。」

あ、やっぱり言ってしまった。

梅宮さんが余計な牽制してくるから、ついやり返したくなる。



俺の言葉に梅宮さんは一瞬驚いた顔をしていたけど、すぐにいつもの表情になった。

「そうなんだよぉ。最近仁美さん桜と仲良いんだよね。」

「………………。」



梅宮さんが難しそうに言うのはしょうがない。

あの沙織という女は、どうしようも無いコミュ障で人嫌いだ。

梅宮さんと付き合っていても、俺たち風鈴には近付かない。



……俺にはそうでも無いが。



その人嫌いが俺には構うから、梅宮さんは俺を警戒している。

だけど、どうやら桜にも普通に接している。



まぁ、あの女が桜を気にしているのは理由は明確だった。

桜とあの女は同じ様に片目が色違いのオッドアイだから。

2人とも気になってしょうがない様だ。



梅宮さんは2人が仲良くしてくれるのは嬉しそうだが、基本あの女の横に自分以外の男が居る事を嫌っている。



とんでもなく迷惑なカップルなのだ。



（……そんなに信用して無いなら何で付き合ってるんだ？）

柊さん曰く、あの女が梅宮さんの初めての彼女だから、舞い上がっていると言っていた。

商店街で守らなければならない最注意人物が増えて、柊さんの胃の調子がさらに悪くなり可哀想だ。