第3章 猛毒の情火(五条視点)
「ゆめか……僕のことが嫌なら本気で拒めばいいのに、感じすぎじゃない?本当にやめてほしいなら……もっと、嫌そうな顔しなよ」
「……そんな……わたし……」
きっと、僕は今、彼女に見せたことがない顔をしているだろう。
相対的に、蒼白になった可愛い顔が、見たこともないくらい戸惑いと絶望の色に染まっていく様が堪らなかった。
そうだ、もう一押しだ。
「だから、ゆめかは僕が好きなんだって」
「……へ……?な、に……」
「僕のことが好きだから……ココ、疼くでしょ。さっきから欲しくて辛いんじゃない?」
指で臍のあたりをなぞる。
「隠さなくていいよ。ゆめかの欲しいモノ、あげる」
彼女の耳介に唇を寄せて悪魔のように甘言を囁くと、涙の跡を新たな雫が上書きしていく。
心より先に身体を攻略したのは、快楽に従順な片鱗を垣間見たから。
ゆめかは真面目な性根だけど、未知への好奇心は人一倍強い。
押しに弱く、強烈な誘惑を拒む精神力も持ち合わせていない。
足を踏み外したら、素直にどこまでも転がっていく逸材。
人間、誰しも何かに依存して生きている。僕は彼女の背中を軽く押しただけ。
小さい声で僕の名前を呼ぶ声がする。
返事をする代わりに、桜色の耳朶を甘噛みした。
「さと、る……が好き……」
初めて聞いた「好き」に、腰がズキズキと熱くなる。
念願が叶う瞬間だった。悦びで心に明かりが一気に灯る。
「好きだから、抱いて……」
2本の腕が僕に向かって広げられたので、華奢な体を抱き込むように覆う。
虚空を捉える瞳に僕は映らない。
掠れた声で僕を求める唇を奪い、舌を絡めて達成感に浸った。合わさった唾液さえ甘く感じる。
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