第2章 中毒ロマンス(五条視点)
ある日の深夜、一人でホテルのシャワーを浴びながら行為の余韻に浸っていた。
とめどなく降り注ぐ湯の中、自分の両の手を見つめる。
あんなにも体の相性が良い相手に出逢ったのは初めてで、衝撃的だった。
抱いても抱いても、鳴かせたい衝動が湧いて、珍しく自制できなかった。
「あったかくて、だいすき」
と、紅潮した頬と潤んだ瞳で誘う彼女を、声が掠れるほど犯し尽くした。
相手をイかせるたびにシーツが乱れて、押さえつけてその白い波に沈めて、息が苦しいと抗議されるまで口付けた。
下戸だしアルコールは嫌いだ。
思考と判断が鈍る。
だが、気もそぞろに僕を求め、善がる彼女の吐息から洩れた酒の香りには背徳感が煽られた。
相手から香る化粧品と発情したニオイが混ざったあの独特な空気は、行為後に嫌悪感と虚無感を引き連れてくる。
たまに性欲を消費する時は、一夜限りで後腐れなく。相手が眠っている間に全ての痕跡を消し、部屋を後にする。
それなのに、今回の相手には、目が覚めるまで傍に居たいという思いを抱いた。
シャワーの栓を締め、バスローブに身を包み、ざっと髪を乾かしてから部屋に戻る。
ベッドで無防備に寝ている彼女を一瞥し、床に落ちている服を拾う。
とっくに気づいていたが、彼女も自分と同じ呪術師だ。術師は一般人の呪力の流れとは異なるため、六眼で見れば一発で見分けがつく。
この世界は意外と狭いものだ。
「真面目だねぇ。身分証携帯してんのか」
服を畳もうと広げた時に落ちたそれは、彼女の等級と名前を示す重要なもの。
高専を卒業した時に、希望すれば術師としての身分証を作成してもらえる。
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