第1章 ご主人様の言うとおり
どうしてこうなった。
「さ、ゆめか、お尻向けて僕の顔に座って」
夢野 ゆめか、只今メイド服のコスプレをして恋人の顔を跨ごうとしています。
ことの発端は、恋人である悟の誕生日プレゼントのリクエストだった。
中身は変態だが、五条悟といえば容姿端麗、呪術師最強にして名門である御三家の五条家現当主である。
手に入らないものはない。その代わりに幼い頃は自由もなかったと聞いて、名家は大変だな、と感じた。
ならばお金で買えない思い出作りをしてあげたいと思い、特別デートプランを考えていたが当の主役の言葉で瓦解した。
「色々考えたけどさ、やっぱりメイド服のゆめかから御奉仕受けたいな」
平和な休日の朝。カップのコーヒーにポチャポチャと角砂糖を入れながら、爽やかな笑顔で提案してくる悟。一方、言われた私の心の中では猛烈な吹雪が発生していた。
全くの想定外かといえば、そうでもない。
この男とロマンチックな誕生日を過ごすなんて、やはり幻想だった。一緒に飲んでいたコーヒーの味は甘かったか苦かったか、もはや覚えていない。
メイド服は黒のフリフリで、ガーターベルトもしてね、胸はノーブラで、下着は紐パンかTバックがいいな。
……などと、つらつらと願望を述べられ、上層部絡みとか仕事でストレスが溜まって思考回路がバグったのかな、特級術師は大変だな、と菩薩のように広い心で受け止めることにした。
来たる当日の12月7日。
最速で任務を終えてから報告書に名前だけ入れ、すべて補助監督の伊地知さんに押し付けて帰ってくるであろう悟と待ちあわせになった。
なんでも五条グループが所有する最高級ホテルのフロアをいくつか貸切にしたらしい。
さすが金持ちの変態はスケールが違う。
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