第6章 ご主人様のお気に召すまま【後編】
汚い欲にまみれた心で、欲をぶつけ合って、お互いの存在を確認する。
独占欲を抱いた果てに執着して、壊し合うように貪り、それでも離れられない。
これは、きっと依存。
「そうだよねー、ゆめかが僕から離れられるわけないか」
悟の憎まれ口も、今のこの瞬間は笑いを誘う。
ふふっ、と思わず私が吹き出すと、馬鹿にされたと思ったのか、悟は拗ねたように頬を膨らませた。
彼の目を覆っていた手を退けて、その丸い頬を軽くつつくと、プシュッと空気が抜ける。
同時に、堪えきれずに二人で笑った。
「悟は耳かきされたことある?」
「……ない」
「じゃあ、今度やってあげる」
ひとしきり笑い合って和やかに会話をした後、お腹は空いていないか悟から聞かれた。
そういえば、とっくにお昼は過ぎていて、おやつの時間にさしかかる頃だった。
「ホテルが用意したケーキが冷蔵庫に入っていたはずだから、ゆめかと食べよっかな」
そう言って悟は起き上がると、平皿に乗せた小さめのホールケーキを持ってきた。
3号くらいだろうか。
ベッドルームの窓際に設置されたテーブルに、ケーキが静かに置かれた。
光を受け、つやつやと美味しそうに輝く苺や桃などのフルーツが堂々とケーキの上に鎮座している。
主役たちの色鮮やかさを邪魔しない程度に上品に飾り付けられた生クリームを目にした瞬間に、忘れていた空腹を思い出してしまった。
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