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人魚姫【文スト/中原中也】

第1章 出逢いと再会


彼、中原さんとは実は7年前に出逢っていた。


私は海が好きで1人で見に来ることもあった。

昔、両親によく連れて来てもらっていたからだ。

その日も海を見に来ていた。

いつもは静かなのに、今日はやけに騒がしかった。

少し気になり、様子を見に行くと崖の下に男の子が座り込んでいた。

なんだが具合が悪そうだった、近づくとお腹から出血していて仄かに毒の匂いがした。


身体が勝手に動いていた。

彼を助けたいと思った。

彼の毒を取り除き、お腹の出血を止めた。

良くなったのを確認し、離れようとすると腕を掴まれた。

なかなかの力で振り解くのも難しそうだ。

一か八かで数年ぶりに異能力を使った。

久しぶりに自分の声を聞いた。

これ以降話さずにいたせいで、声の出し方を忘れてしまったのだ。

私にとっては好都合だった。


そして時は流れた。

海を見に来ると、ふと彼が過った。

夕焼けの空のような赤に近いオレンジ色の髪、青空のようなブルーの瞳だった。

無事でいてくれますように、、、、。

海を見に来てはそんなことを毎回願っていた。


そして再会したのだ。

すぐに判った、彼だと。

しかも彼も私のことを探してくれていた。

すごく嬉しかった。

本当は私だと云いたかった。


でも、云えない。


中也さんには耳が聞こえないと云ったが、本当は聞こえている。

でも話せないのは事実、声が出ないのだ。


私の異能力"セイレーン"は歌を聞かされた人間を操ることが出来るのだ。

そしてセイレーンの力は治癒能力もあるが、発動条件は口付けをする必要がいる。少し厄介なものだった。


私は自身の異能力が大嫌いだ。




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