第1章 【シン】恋と狂宴【R18】
「……お前のセンスはダサすぎるな」
(あの二人、やっぱり……)
アキラとカゲトのいらぬお節介に私は舌打ちしそうになった。
シンが私の手を握ったままブローチを取り上げた。
「ちょっと、ずるい! それは私のもの……」
「残念だな。たった今、俺のものに戻った」
「……!」
「まぁでも、お前がもう少しこのゲームを続けたいというのなら……チャンスをくれてやってもいい」
「チャンス?」
上から見下ろされるまま、シンは不敵な笑みを浮かべて手を絡めてきた。
「ん……ちょっと」
「どうだ? やるのか、やらないのか」
「……やる、わ」
どうせ、シンのことだから私が拒否しないように誘導するに違いない。
やらない、と言ってもやるって言うまで責められそう。だから、不本意の「やる」なのだ。
「そんな顔するな。ゲームはちゃんと平等だ」
「ほんとに? で、どんなゲームなの?」
「そうだな……」
そっと一度目線を外したシン。だけどすぐに私の方を見ると、口角を上げた。
「俺の睡眠を邪魔した罰として、俺の気の済むまで付き合って貰おうか」
「どういうこと」
「眠くなるまで俺の相手をしてくれたら、返してやる」
「……なるほど。あなたを寝かせたらいいってことね」
「そういうことだな」
鼻をフンっと鳴らしたシンは、やれるもんならという余裕綽々の顔。腹立つけど、今はこのゲームになんとしても勝たないと。
せっかくここまできたんだもの、無駄にはできない。
「そろそろいいか?」
いつの間にか、シンの顔が私の目の前にまで近付いてきていた。鼻先があたりそうな距離に私は一気に動揺した。
「シ……ン」
息を飲むほど整った顔の破壊力は想像以上だった。
「やるって言ったのはお前だからな、最後まで付き合えよ」
「わかってる!」
「ふっ……その威勢がどこまで持つのか見物だな……」
僅かな隙間を埋めるように、シンの顔が近付いてくると唇が重なった。
「ん……!」
普段は冷酷な空気を漂わせているのに、唇はちゃんと温かい。それに……思っていたより柔らかい。
「なにを考えてる? 余裕だな」
「違っ……もしかしてこれって……」
私は気恥ずかしくて少し目線を逸らしながら語尾を濁した。
顔がいくらイケメンでもいきなりこれは……。