マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】
第2章 スーパーヒーロー、その名はボウフウリン
「お待たせしました……。あの、改めてよろしくお願いします」
ポロポロ流れていた涙がようやく落ち着き、その間見守りながら待っていてくれた彼らに気まずくなりながらも、改めて頭を下げる。
「お、おう……」
「うん、よろしくね」
「よろしくお願いします!えっと……」
「そういえば、お互い自己紹介がまだだったね」
そう言って蘇枋さんはにっこり笑い、「オレはレオナルド・ディカプリオ。よろしくね」と名乗った。
……………………
「レ……?え……?」
突然告げられた横文字の名前に、一瞬理解が遅れる。でも、すぐに頭の中で、さっき蘇枋さんが言った名前を繰り返しやっと理解する。
(レオナルド・ディカプリオ?蘇枋、じゃなくて?)
自分の記憶が正しければ、にれさんにそう呼ばれていたはずだった。一体どういうことなのだろうか。
困惑しながら蘇枋……じゃなくて、レオナルド?さんを見るけど、彼は変わらずにっこり顔でどうしたの?、と言うように小さく首を傾げるだけ。
(……もしかして、私の勘違い?)
うん。きっとそうだ。
だって、す……じゃなくてレオナルドさんは、こんな冗談を言う人とは思えないからだ。今までの彼の言動を思い返せばなおさら。
頭の中でうんうん、と頷きペコリ、と彼に向かってお辞儀をする。
「よろしくお願いします。レオナルドさん」
「っ……」
「丁寧なお辞儀をしているところ申し訳ないですが、違うっす!!」
「……え?」
そしたら、にれさんが大きな声で否定してきた。
まさかそんなことを言われるとは。思わずにれさんを見ると、彼は焦った様子で私を見ていた。その横では、桜さんが呆れた様に、顔を背け口元に手を当てながら肩を震わせているレオナルドさんを見つめている。
(……ん?肩を震わせている?)
レオナルドさんの様子に引っかかるものを感じてよく見てみる。……瞳は眼帯で、口は手でよく見えないけど、彼の様子を見る限り、もしかしなくても笑っている様だ。
(……じゃあ、さっきのは冗談……?)
「彼はレオナルド・ディカプリオではなくて、蘇枋隼飛さんです!」
その姿を見てひとつの可能性に至るのと、にれさんがレオナルドさんの本当の名前を言うのは同時だった。