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マイナス、のちゼロ距離センチ【WIND BREAKER】

第1章 光差す向こう側で


(本当に、いいのかな……?)

「よく言えましたー」「子ども扱いすんじゃねぇ!」「桜さん、相変わらず顔真っ赤っすね!」「うるせー!!」と続ける彼らを横目に決めあぐねていると、ふいにこちらを見た蘇枋さんが歩み寄ってきた。

「まだ、決心がつかない?」
「うっ……は、はい」
「君もなかなか強情だなぁ」

そう言って苦笑する彼を見て、これはこれで迷惑をかけてしまっているのでは、と思い始める。早くどちらにするか決めないと、と急いで考えていると、一番最初に会った時のように、蘇枋さんが真っ直ぐ伸びた綺麗な背中を少し屈めて、目線を合わせてきた。

「大丈夫。そもそも迷惑だと思ってたら、最初から手伝いを申し出ないよ」
「あっ……」
「……オレ達と記憶を取り戻して、君が生きてることを一緒に証明しよう」
「!!」

泣きたくない。彼らに迷惑をかけるから。
そう決めたのに、当然という様に穏やかに笑いながら言い切った蘇枋さんのそのひと言で、涙腺が決壊してしまった。
それに気づいてポロッ、と涙が目から溢れる前に慌てて拭うけど、全然止まってくれない。だから急いで後ろを向き、蘇枋さんに涙を見せない様にする。

「隠さなくても平気だよ。笑わないから」
「蘇枋さんがそんな人じゃないって分かってますけど、嫌なものは嫌なんです……!」

(だって、恥ずかしいから……)

「そっか……うん。オレも、君の嫌がることはしたくないから、代わりにさっきの返事を聞かせて欲しいな」
「っ、はい……!はい……!!よろしくお願いします……!」

何度も何度も、力いっぱい頷く。だって私も、ひとりじゃなくて、心優しい彼らと一緒に記憶を取り戻したいと、自分はちゃんと生きてることを証明したいと思ったから。
そしたら、後ろを向いてるから蘇枋さんの顔なんてこれっぽっちも見えないけど、嬉しそうに笑ってくれた様な、そんな気がした。












光差す向こう側で出会ったのは、心優しいスーパーヒーロー達でした。


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