第6章 恋い蛍✿
寮にある私の部屋の前へと辿り着き、私をそっと降ろしてくれる。
鍵を開けると、再び抱き上げ、ベッドまで連れて行ってくれた。
そして、靴擦れの箇所の消毒と手当をしてくれた後、傑お兄ちゃんは立ち上がった。
「何かあれば、すぐに連絡しておいで」
その言葉に、私は思わず眉を下げる。
今夜は一緒に過ごすのは無理みたいだと分かると、途端に我儘に拍車がかかる。
離れたくない、ここに居てほしい。ずっと、このまま、私だけの傑お兄ちゃんでいてほしい。
「やだ、ここにいて」
立ち上がって、思わず目の前の制服の裾を掴むと、しょうがないなと言いたそうな表情で苦笑された。
そして、裾を掴んだ私の手を優しく外されて、お兄ちゃんの体温と匂いに包まれる。
「私、お兄ちゃんが思ってるよりも、ずっと子どもみたい」
心地良い安堵感に、思わずそう漏らすと、お兄ちゃんは私の頬を両手で優しく包み込んでくれた。
「良いじゃないか、その方が私も安心する」
引き寄せられるようにお互いの顔が近づいて、唇が重なった。
何度も何度も角度を変えて、次第に深くなる口付けに、私はただ身を委ねるしかなかった。
「……っ、はぁ……お兄ちゃん……」
合間に息をするのが精一杯で、息苦しくなった私は、傑お兄ちゃんの制服を握る手に力が入るのを感じた。
それでも口付けは止まず、熱い舌が口内へ侵入してきたところで、流石に息が限界だった私が身じろげば、途中で止めるのが惜しいとばかりに唇が甘噛みされた後に、離れていく。
お互いの口元からは唾液が糸を引く光景に、私は恥ずかしくて、思わず口端の涎を拭いながら顔を背けた。
傑お兄ちゃんが、くすりと笑って私の頬を撫でる。
「そんな顔をすると、我慢出来なくなる」
吐息混じりに艶のある声で囁かれて、背にぞくりとする感覚が走る。
見上げると、少し熱を持った傑お兄ちゃんの目と視線が合った。
その眼差しに、私の身体の芯が痺れるような心地がして、自然と顔が紅潮していくのが自分でも分かる。
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