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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第5章 憂いとけじめの青



「寮に戻ろうか」
「え……あ、これぐらい平気だから」

恥ずかしくてジタバタするが、お兄ちゃんはそれを意にも介さず、私を抱きかかえたまま歩いていく。

「でも、その足では歩くのが辛いだろう。裸足で戻る気かい?」

そう言われて、私は言葉に詰まった。

確かに、この足では下駄で歩くのが大変だろうし、傑お兄ちゃんに心配を掛けたくない。

けれど、相手の負担にはなりたくなくて、少し葛藤した後、口を噤んだ。

「……ありがとう」

ポツリと、そう小さく呟くと、

「ゆめなら、いつだって喜んで抱えるよ」

と言われた。嬉しさと気恥ずかしさに、私は小さく笑う。

「お兄ちゃんって、私の事好きだよね」

素直な感想を口にすると、私を抱き直す手の力が強くなった。ふと見上げれば、動揺したように視線を泳がせるお兄ちゃんがいた。

からかったら、いつものように軽口が戻ってくるかなと思ったけれど、違ったらしい。

彼は咳払いをした後に、小さく息を吸った。

「きっと、呪いになるほど好きだよ」

そう告げた時のお兄ちゃんは、酷く真剣な眼差しで私を見つめていた。

私は思わず息を飲んだ後、堪らなくなってその首に抱きついた。

「お兄ちゃんになら、呪われてもいいよ」
「……私も、ゆめになら呪われても構わない」




ああ、やっぱり私はこの人が好きだ。




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