第2章 甘く苦いメランコリー
私は式神使いの端くれだけれど、呪力量も技量も呪霊操術を駆使するお兄ちゃんの足元には遠く及ばない。
実力を認められている同級生に少しだけ黒い嫉妬の感情を抱きながら、式神を褒めてから引っ込め、スカートの埃を払う。
その後、他に呪霊がいないことを確認し、呆気なく調査任務を終えた私達は廃ビルを後にした。
謎の白骨化遺体は高専関係者が回収して調べるらしい。
七海くんの考察では、私たちが発見した遺体は、何らかの理由で生きながら壁に埋められていたものではないかということだった。
命尽きるまでの時間に蓄積された膨大な負の思いが呪いとなり、呪霊が呪霊を呼んでビル全体に影響を及ぼした、と。
「あの人も身元が分かればいいよね。そしたら、家族の元に帰られるし」
「いずれにしろ、呪術師として出来ることはここまでだ。後は警察がどうにかするでしょう」
帰りの車の中。
優しい発言をする灰原くんの横で、終始冷静な七海くんは軽く溜め息をついて、目を瞑っていた。
私は、この二人のやり取りが好きだ。
ちょっと危なっかしいけど、太陽みたいな明るさを持つ灰原くん。
沈着冷静だけど、仲間のフォローも忘れない思いやりを持つ、実力派の七海くん。
彼らが同期で良かったと、心からそう感じた。
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