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【呪術廻戦】薄夜の蜉蝣【R18】

第11章 可惜夜✿


当主になった五条先輩の隣にいると決めるということは、将来一緒になる覚悟も、強さも必要ということだろうか。

「もし俺を選ぶんなら、ゆめも腹を決めろ。呪術界の御三家は思った以上に闇が深い」

いつもの軽薄でちゃらんぽらんな雰囲気とは打って変わり、真摯に見つめる表情に心臓の鼓動が早くなる。

「まずは、傑と今後について話し合え」

脳内の整理がつかないまま何も言えないでいると、私の頭を五条先輩はポンと軽く撫でるように叩く。

だけどすぐにその手を引っ込めた彼は、遠くを見つめるような目をして切なげな表情になった。

いつもは勝ち気な眉も下がり、瞳が揺れる。そんな不安定そうな様子の彼を見るのは初めてで、私は息を詰めた。

「五条先輩……?」

恐る恐る名前を呼んでみると彼は俯いてしまう。

どうしたのだろうと思って手を伸ばすと、ぎゅっと抱きすくめられた。

素肌に触れる五条先輩の体温に、少し安心する。すると彼は消え入りそうな声で呟いた。

「なぁ……俺が傑に殴られたら、ゆめは慰めてくれる?」

そう言葉を絞り出して私の肩に顔を埋める先輩に、どうして良いのか分からずにその広い背中にそっと腕を回してみる。

華奢な身体つきに見えて意外と筋肉質な五条先輩。

彼が更に身を寄せてきたので、重さでベッドに倒れ込みそうになるが必死に耐えた。

「……悪い、ゆめ……ちょっとこのままで。今だけこうしてて」

まさか泣いているのかと焦ったが、彼は私の首筋に顔を埋めたまま動かなくなってしまった。

私は彼の背中に回した腕に力を入れて抱き締めてみるが、その大きな背中が震えているような気がしてしまう。

五条先輩が弱気になっている理由もはっきり分からないのに、なぜか私も胸の奥が重く苦しくなってくる。

二人でベッドに寝転んだ後も、五条先輩は私に抱きついたまま離れようとしなかった。

宵闇の中、規則的な寝息が聞こえてきたことに安心し、私も瞼を閉じた。




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