第11章 可惜夜✿
「ゆめ」
優しい声で呼ばれると、途端に意識が現実へと引き戻される。先輩を見上げると、額に髪が張り付いていたので、指先でそっとかき分ける。
その拍子に彼の耳に触れてしまったようで、少しくすぐったそうに五条先輩の瞳が細められた。
紅潮している彼の頬に優しく触れると、上から包み込むようにして手を掴まれた。
「……明日、オマエのこと思い出して、俺一人でオナるかもしんない」
「急になんですか、先輩」
「だって、そうだろ。好きなヤツと夏祭り初デートした夜に念願叶ってヤれて……まぁ、親友の妹を寝取ったってのは、どこぞのエロゲーの悪役みたいだけどな」
ピロートークにしては、情緒の欠片もない。
余韻を楽しみながら紡ぎ出される会話のはずなのに、先輩の言い草はどこか笑いを誘う。
「じゃあ……共犯ですね。この状況を受け入れたのは私ですから、悪役は二人ですよ」
まるで言い訳のようだけど、本心だ。
なんだか無性に甘えたくなる。くすくす笑いながら彼の肩口に擦り寄れば、五条先輩は「共犯」と呟いてから、鼻で笑った。
傑お兄ちゃんの顔が脳裏にちらついたけれど、それ以上を考えさせないと言いたげに、五条先輩で視界が埋まる。
じゃれるように何度も角度を変えて口付けられて口唇を甘噛みされると、燻る熱が爆ぜる。
「んっ……ぁ……」
思わず漏れ出る吐息混じりの声。
五条先輩の舌が入り込んできて、ちゅくっという音と同時に、口内に愛撫を受ける。
微かに水音を立てて離れる彼を追いかけるように目線を上げると、青い瞳がこちらを射抜いた。
「今夜は、ぐちゃぐっちゃのどろどろに甘やかしてやるよ」
五条先輩は私の首筋へと顔を埋め、ぺろりと舐める。それから耳元まで上がってきて軽く噛み付くと、またすぐに首筋へと戻り強く吸う。
その行為を繰り返し受けると、否応でも体は劣情を催す。
「あっ、ん……せんぱい……」
彼の指が鎖骨から胸を辿り、感触を確かめるような手つきで胸全体を揉みしだく。
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