第1章 背徳は蜜の味✿
しばらく睦み合ってから、私の呼吸が落ち着いた頃を見計らい、中からズルリと引き抜かれる喪失感に、また体が震えた。
「……大丈夫かい?」
心配そうな顔をしながら、傑お兄ちゃんが私の顔を覗き込む。
「歩ける?」
続けて問われたが、脱力している私は、ふるふると首を振ることしかできなかった。
傑お兄ちゃんは私の背中と膝裏に手を差し入れると、軽々と持ち上げる。所謂お姫様抱っこの状態で、私はベッドの上に降ろされる。
「タイマーでエアコン入れておいたんだけど、寒かったりしないかい?」
「うん、大丈夫……」
傑お兄ちゃんは優しく微笑むと、私の隣に横になった。狭いベッドの上で、向かい合うように抱きしめられた状態で頭を撫でられていると、すぐに睡魔が襲ってくる。
瞼が重くなってきた私に気付いたのか、目の前の形の良い唇がそっと囁く。
「まだ時間はあるし、このまま寝ていいよ」
優しい声色に小さくコクリと返事をした直後、眠りに落ちていく寸前に感じたのは、額に触れる柔らかな温もり。
心地良い体温に甘えるように、無意識に自分からも身を寄せると、大きな手が背中をポンポンと叩く。
その安心するようなリズムに誘われて、ゆっくりと意識を手放していった。
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