第4章 捕まるドロン
「ドロン、少しの間耐えてくれ」
私はドロンの肩を叩いてそう励ました。
「おい、アルフレッド、助けてくれよ」
とドロンは小声で言ったが、ロード様には聞こえていたらしく、もうすぐ終わるからとクスクス笑っていた。ロード様がずっと楽しそうなのが、私たちの喜びなのも確かなのだ。
「あら、そこの弓兵」
「は、はい、ロード様」
王室に入ってきた弓兵の一人に、ロード様は急に声を掛けた。弓兵は私に用があって来たようだったが、これはロード様に捕まってしまうルートだろう。
「髪が乱れてるわ。こっちにおいでなさい」
「あ、はい、すみません、罰ならなんでもいたします……」
「整えてあげる罰ってことでいいかしら?」
「え、それは、ロード様の手を煩わせる訳には……」
「いいからいいから。ほら、ドロンのヒゲが綺麗になったわ」
ようやく、ドロンはロード様から解放されたが、次なる犠牲者……否、愛の施しを受ける人物が決まったようである。
「今度は貴方の寝癖を直さなくちゃね」
「ロ、ロード様……?!」
ここの領地の兵士なら誰もが知っているだろう。ロード様に捕まると、数時間は開放されないと。
楽しそうなロード様とは真逆に、弓兵は引きつった笑みで私に助けを求めるように視線を向けてくる。
私は横でドロンが自分のヒゲを三つ編みし出しているのを見、人を助けるためだと思って、と先程ドロンに言った言葉を弓兵にも掛けた。
「少しの間、耐えてくれ」
「ア、アルフレッド様……!」
弓兵は一時間程、ロード様に捕まってたということは、語るまででもないだろう。
おしまい