• テキストサイズ

ロード様とヒーローたちの休息[rm]

第4章 捕まるドロン


「う、うーん……」
「大丈夫よ、ドロン。ちゃんと綺麗に結ぶから」
 ある日の朝。今日の兵士たちの訓練度と周りの戦況報告に王室へ向かうと、すでにロード様に捕まっているドロンの姿があった。
「ロード様」
 ドロンを助けるつもりで私が声を掛けると、この領地の主……ロード様がこちらを振り向いた。
「あら、アルフレッド、おはよう」ロード様は今日も楽しそうだった。「今ドロンのおヒゲの手入れをしているの。いつ触っても綺麗なのよね」
「それは、ロード様がいつも手入れをしているからですよ」
 と私が言うと、ロード様はケラケラと笑うばかり。一方のドロンは、ロード様にヒゲを握られて困っている顔だ。
「兵士や戦況の報告をしたいのですが……」
 と私は手にした報告書をロード様に渡そうとしたが。
「今はドロンの手入れで忙しいから、そこで読み上げてくれる?」
 ドロンのヒゲを手入れするためだけに使われている長い桶に入れたぬるま湯から、ロード様は手を離す気はないらしい。黄金色に染められ、細かい彫刻もあしらわれた桶は恐らくマイペースなロード様に嫌味のつもりで他領地様から贈られた棺桶なのだろうが、まさかドワーフ族のヒゲの手入れに使われているとは思わなかっただろう。
「……という状況です」
 私がドロンに助け舟を出そうとしたがそれすら出来ないまま報告書を読み終えると、ロード様はそう、と短く返事をするだけだった。
 ドロンのヒゲは確かに白くて美しい。私がドワーフ族と戦った時も、白くて長くて三つ編みにしていたのはドロン、彼だけだった。だが、私は知っている。ロード様にここのヒーローとして選ばれたドロンはいつも、ロード様に失礼のないようにと自分でヒゲを整えているのだ。そこまで細かく手入れをする必要もないのだろうが、誰よりも民や私たちを愛してるロード様なら、それがドロンへの愛情表現だと思うと、直接的に止めようという気が起こらなかったのだ。
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp