第24章 ロード様が寝込んでしまった?!
「ロード様!」
ある日のこと。ロード様の寝室に私が駆け込むと、そこには寝具に横になるロード様と看病をするフェリシアがいた。
「あら、おはよう、アルフレッド」
ロード様はそう言ってゆっくりと私に目配せをしたが、顔色は明らかだった。青白い顔に元気のない声。ロード様に何があったというのだろう……!
「しぃー! 病人の前は、声静かにね!」
とフェリシアに窘められ、私はすまぬと小さな声で謝った。だが、ロード様の一大事に、大声を出さずにはいられるだろうか。
「今さっき、ルドルフさんと調べたんですが」そばにはタリアもいて、本を開きながら私に見せてくれた。「ただの風邪のようです。熱も出ているので、ルドルフさんは何人かと薬草を取りに行きました」
「そ、そうか、風邪か……」
とはいえ戦争が絶え間ないこの時代、薬や薬草を手に入れるのはそう簡単ではない。私は深呼吸をしたが、脳裏では昔ジョアンが熱を出して大変だったことが浮かんでなかなか落ち着けなかった。
「私に出来ることはないだろうか?」
何か少しでも助けを、と思って言った言葉だった。だが、侍女たちも助けてくれているから大丈夫と丁寧に断られ、ここは彼女たちに任せるしかない、と思った矢先にそれは起きた。
「お待ちください、サラム様!」
扉の向こうで騒々しい声と足音。なんだろうと見上げるや否や、扉が荒々しく開いた。
「今ロードが弱ってるんだろ?! 首取るなら今だろうが!」
サラムである。
気迫ある言葉に女性たちは一斉になってロード様を庇う行動を取る。フェリシアは堂々とサラムの前に出たくらいだ。
「またアナタね! 少しは気遣いってものを覚えたら??」
とフェリシアはサラムに言い返したが、彼は容赦なかった。
「俺様に指図するってのか? あぁっ?!」
「手を出すのはやめるんだ、サラム」
サラムがフェリシアに向かって手を上げたので私が割り込んで止めに入る。私はサラムの手首を掴んでいた。
「はんっ、護衛付きかよ。相変わらずアイツのご機嫌取りか」
そう言い捨てるなり、サラムは部屋を出て行った。だが、また来るのかもしれない。ロード様も起きてはいたが、喋る元気はないように見える。
「私が護衛についていた方がいいようだな」
私の言葉に、その場にいた女性たちは否定しなかった。
つづく