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ロード様とヒーローたちの休息[rm]

第23章 赤い少女


「新しい演劇が出来たの。時間があったら見に来てね」
 そう言われたロード様の言葉を思い出しながら、私は城内にあるホールへ向かった。そこは民たちに心の癒しを提供する娯楽場として誰でも自由に出入り出来る場所であり、今日もいつものように人々で賑わっていた。
 自由解放をした最初の頃は大変だった。人が多いからとこの場で商売を始める者がいたり、それらの金品や物を盗む輩で大勢いた。なのでこのホールでは必要なルールが決められてようやく演劇を見るという娯楽が民たちに浸透し始めた頃、ロード様が新たな演劇を生み出したから見に来て、と言ったのである。
 一体どんな演劇なのだろう……と空いた席を見つけて座ると、間もなくホール中が暗転した。途端に静かになる客たち。暗転したら静かにするというルールも、しっかり守られているみたいだ。
 そしてようやくスポットライトが舞台を照らした時、カーテンが開かれ、タリアが司会を始める。
「むかしむかしあるところに、二人の赤い少女がいました……」
 とタリアが語り、前に見た演劇と同じだなと私は思ったが……ちょっと待て、今さっき「二人」といった……?
 そう考えている内にタリアは舞台の袖へ下がり、主役が登場した。アストレと並ぶ……ロード様?!
 ロード様はアストレによく似たそっくりの赤いドレスを身につけ、楽しそうに踊ったり歌ったりしていた。私は思わず立ち上がりそうになったが、純粋に劇を楽しんでいる人もいるのだからと椅子に座り直した。
 演劇はどんどんと進み、タリアが再び舞台に出てきた時は、アストレとロード様は両手を繋いでその場でグルグル回っていた。二人は楽しそうに笑っている。
「そうして、二人の赤い少女は、いつまでも幸せに暮らしました……おしまい」
 とタリアが締めくくり、舞台は暗転する。正直私は劇の内容をほとんど見ていなかったのだが、周りの客たちは次々に立ち上がって拍手を送った。どうやら、演劇は成功したようだ。
 私も立ち上がり、客たちの間を縫って舞台裏へと急いだ。私もロード様とアストレに拍手を送りたい。送るなら、目の前がいい。
 私はいても経ってもいられず、足早にロード様の元へ向かった。

 おしまい
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