第10章 ドロン捕まる、再び
ドワーフ族の彼らからしたらロード様は子どもみたいなものなのだろうか。ヒルダの提案に全く否定するどころかウキウキしているロード様は、後ろを向いて椅子に座ったヒルダの髪の毛をクシで梳き始めた。髪留めを解くと、ヒルダの髪の毛はそんなにも長かったのか。
「いつものように時間はかかりそうだけど、ロード様は大丈夫かしら?」
「大丈夫よ。私も長いもの」
女性たちが楽しそうに話し始めたので、私はドロンと共に王室を出ることにした。彼女たちの笑った声が、廊下まで聞こえてくる。
「……さっきの言っていたことは本当なのか?」
失礼だと思いながら私がドロンに聞いてみると、少し困ったような顔で、ドロンは小さく頷いた。
「半分は本当だ。半分は面倒だからだが」とドロンは話す。「俺は別に、ロード様に髪の毛を触られるのは嫌いじゃないぞ」
「そうなのか?」
てっきり、迷惑しているのかと思ったが。
「まぁヒゲは勘弁して欲しいがな。直すのにかなり時間がかかるんだ」とドロンはヒゲをさすった。「そうだ、今度お前もやってもらったいい。ロード様の手が優しいんだ」
「いや、私は……」
「お前の女房も恨んだりしねぇよ。むしろロード様のことを気に入るはずだ。それはお前がよく分かっているだろう?」
「そうだろうか……」
私はドロンから視線を逸らし、王室を少し覗き込む。
楽しそうなロード様の顔は、いつも幸せそうだ。
亡くなった妻も、許してくれる気がした。
おしまい