第2章 2人暮らし、始めました
鼻歌混じりにボトルを洗ってると不意に頭にずっしり掛かる重さ。ついでに腹に回ってくるガッチリした腕。顔を見なくてもわかる。こういう事するのはクロしか居ない。
「何?重いんだけど。」
「…撫でて。」
「ハイハイ。届かないんだから屈んで。」
「ん。」
言われた通りに私の頭の上に乗せてた顎を肩に下ろしたクロ。猫かコイツは。ツンツンに立った髪を掻き分け頭を撫でてやると満足そうに笑う。
コイツが甘えてくる時は、一つしかないんだよな。
「男の嫉妬は見苦しいぞクロ。」
「梟谷と試合するのは別に良いけど、お前が赤葦赤葦言ってるとムカつくわー。」
「お前は私の彼氏か。」
「いずれそうなるだろ?」
「やめて薄ら寒い。気が済んだら離れてよ、汗臭い!」
「どうしよっかなー。」
「ウザい。」
「うぐッ!」
振り上げた肘を思いっきり鳩尾に食らわせる。洗い終わった最後のボトルを籠に放り投げ、クロに向き直った。…よろめいてる。ちょっと本気でやりすぎたか。
「お前ホントに女…?」
「女ですー。それより私先帰るからね。キリいいところで切り上げろよ!オーバーワーク禁止!」
「わかってるよ、ちゃんと帰るって。晩飯ヨロシク。」
「焦がさないように極力頑張る。」
「…マジで頼むぜ?」
*二人暮らし、始めました。*