第8章 黒猫、赤く染まる
時間もいい頃合いになり襲い来る眠気に大きくアクビをした。というか、布団全く足りないよね。予備の布団も2組しか無いし。
「皆何処で寝るの?床?」
「布団足りる?」
「足りる訳ないな。2組ならあるぞー。」
「1人分足りねーのか…良し、じゃあ俺はと寝る!!」
「木兎何言ってんの?」
「せっかく寝るならむさい男より女の子と寝たいだろ?」
「知らねーよ。」
「黒尾と寝ると寝方ウザいしなー。」
「夜久最近俺に対して結構辛辣じゃない…?」
「そんな事ねーよー?」
にこっ、と笑った夜久ちゃんの笑顔が怖い。私は椅子から立ち上がり、既に眠そうな赤葦くんの腕を引っ張った。眠たげな、キョトンとした瞳と目が合う。
「誰か1人と一緒に寝なきゃならないなら私赤葦くんと寝るよ。1番安全そう。」
「…いいんですか?」
「おい待て、男は皆狼だから。俺と寝なさい。」
「それ言うならクロも狼でしょ。おやすみー。」
「待て待て待て!俺が夜久と寝るから赤葦と木兎は布団で寝ろよ!」
「おやすみなさい。」
「話聞けよ!」
部屋に入ると、途端に赤葦くんと2人きりになった。…ん、あれ、5人で居た時は何ともなかったのに2人になった途端やっぱり緊張、する。私はベッドに座り、部屋を眺める赤葦くんを見上げた。
「綺麗に片付いてますね。」
「そ、そりゃね!つい引っ張って来ちゃったけど、木兎と寝たいならそれでもいいよ?」
「木兎さん寝息うるさいから…さんこそ良かったんですか?」
「うん、赤葦くんなら大丈夫かと思って。」
「…そう思ってくれるのは嬉しいけど。」
複雑そうな表情を浮かべた赤葦くんがベッドへ歩み寄り、大きな掌が私に向かって伸びてきたかとその手は頬に添えられる。昼間の光景が頭の中にフラッシュバックして、ドキドキと心臓が脈打つ。反対側の耳に唇が寄せられた。そして囁くようにそっと、吐息が吹き込まれた言葉に身体が固まった。
「俺の事も男として意識して下さい。」