第5章 黒猫の足跡、2つに並ぶ
「今年も文化祭の季節が近づいて来ました。」
放課後のホームルームの担任の一言にざわ、とクラス中がどよめいた。そういえばウチはちょっと早めの7月にやるんだっけ?
「クレープ食べたいなー、後焼きそばとー、りんご飴とー」
「食べ物ばっかじゃん。」
「夜久ちゃんは他に食べたいもの無いの?」
「んー…かき氷とか?」
「夏だねー。」
「ほら話最後まで聞けー。今年の文化祭は7月の14日~16日だ。」
げ、3日間?長い。そう思ったのは私だけではないみたいで、他の生徒から手が上がる。
「何で3日間なんですか?」
「今年は梟谷グループが設立して50年になるからな。音駒と梟谷が合同で文化祭をやる事になった。とはいえ、お前ら3年だからな。参加は自由だし、梟谷のやつらと混じって模擬店を出すのも有り。規定人数はあるし、申請書は書いてもらうけどな。部活の方で出すならそっちを優先していいぞー。」
「梟谷とだって!!」
「うわー、めんどくさくなりそうだなー…。」
ウチと違って私立の梟谷はやっぱり大きいし広い。だから向こうでやるんだろうけど。合同文化祭なんて初めてだから楽しみだなー。
「楽しそうじゃん!夜久ちゃん、バレー部でやろうよ!」
「梟谷の?」
「稼げば稼ぐだけ部費アップのチャンス!」
「目的そこかよ。」
「当たり前でしょ!木兎に連絡取らないと。」
「その前に黒尾と話した方がいいんじゃない?」
「……あぁ、うん、確かに。」
カバンから取り出したスマホをそっと仕舞う。連絡事項を終えて解散すると私と夜久ちゃんと海くんとクロは直ぐに集まって部活へ向かった。
「クロ!」
「却下ー。」
「何も言ってないんだけど!?」
「どうせ木兎達と文化祭ー、とか言い出すんだろ?」
「いいじゃん、絶対楽しいよ!」
「ダメー。」
「いいんじゃない?俺ら高校最後だし、折角合同なら一緒にやれば。」
「海までなんつーこと言ってんの。木兎だぞ?あの木兎。何しでかすかわかんねーだろ!」
「「「あー…。」」」
それはまぁ、確かにと言わざるを得ない。けど初めての合同だしなー、やっぱ普段出来ない事やりたいよなー…。
どうしたものかと首を傾げると、持っていたスマホが狙ったかのように震えた。