第3章 黒猫の足音、屋上を駆ける
甘いものを引き合いに出されちゃ仕方ない。しかも駅前のチーズケーキ屋に至っては直ぐに完売するから中々食べられないし。急に黙り込んで何も言わなくなったクロ。ダメだのやめろだのギャンギャン吠えそうなコイツが全く何も言わないなんて気持ち悪い。そう思って顔を覗き込むと…。
「え、こいつ寝てんだけど。」
「枕で頭挟まなくても寝れるんだな黒尾って。」
「落書きでもしとく?」
「海くんってたまにおちゃめな事言うよね。」
完全に瞼下ろしスヤスヤ眠るクロ。私も食べ終わった弁当を綺麗に包み直し箸でクロの頬をグリグリ抉った。…起きない。すると突然、夜久ちゃんが大声を上げる。
「あッ、やべえ!黒板消してねー!」
「あ、忘れてた…しかも数学じゃん!怖い先生じゃん!!戻ろう!」
「え、黒尾置いてくのか?」
「海くんに任せた。」
「黒板は俺達が消しておくから黒尾は頼むよ。」
「おい薄情者。」
「黒尾置いてけば?」
「……私にそれは出来ないって知ってて言ってるだろ夜久ちゃんバカヤロー!」
「なんだかんだも黒尾に世話焼くもんね。じゃあ、頼んだよ。」
「ちょっとマジか!おいクロ起きろ!!」
にこやかに去っていった海くんと夜久ちゃん。人の気も知らずに寝こけるクロ。左側からハゲろ。
肩を掴み揺すろうがほっぺを軽く叩こうが眠ったまま起きない。電池切れの機械コイツは!!
「クロー!朝だぞー!!」
「んー。」
「んー、じゃねぇよ可愛くないから!おいコラ膝に頭乗せんな!」
寝返りをうったかと思えば太股に頭を乗せてくる馬鹿。確信犯だろお前。何年幼馴染みやってると思ってんだ。さっきより思いっきり頬ひっぱたいてみるが、頑なにコイツは退かない。むしろ私まで眠くなってきた。
「もー…昼休み終わる前には起こしてよ。」
「おー。」
「返事してるじゃねーかてめぇ。」
*黒猫の足跡、屋上を駆ける*
(……やべえガチ寝した。)
(…部活の時間、なんだけど。)