第2章 春 一日目
~女神様の出動~
「あ?お前、誰だよ。何か、俺に用か?」
「私の愛し子を虐めてくれたお礼をしないといけませんからね。さて、どんなお礼にしましょうか。」
男は、不審気に女を見た。
「お前・・・頭可笑しいんじゃないのかよ。」
「可笑しいのはあなたの方でしょう?年端も行かない女の子を虐めるだけじゃなく、あの様な真似を。普段、温厚な私でも許せません。そうね・・・あなたも連れて行きましょう。」
「何処に連れて行くってんだ。お前、ひょっとして・・・俺に気があるのか?だったら、回りくどいことしなくても付き合ってやってもいいぜ?」
「私と?寝言は寝てからいいなさい。用意はいいかしら?」
その時になって、周りから子供の様な声が幾つか聞こえて来た。
「準備万端~」
「お仕置きしなきゃ~」
「僕たちの可愛い人を虐めるヤツには、それ相応の罰を~」
無邪気な声が、辺りに響く。
「ガキが、何言ってんだ。」
「あら、私の可愛いお使いにまでそんな不遜な態度だなんて。これは、強く分からせてあげるべきね。では、行きましょう。」
女の目が怪しく笑う。それに伴い、男の視界は変わる。辺りを見回せば、見知らぬ町。そこで行き交う誰かにこの場所を尋ねても、誰も男を相手しようとしない。
「親密度を上げないと、誰も相手してくれないわよ?精々、頑張りなさいね。フフフ。」
女や子供の姿は消えた。
「ねぇ、女神様。本当にあの男、この世界に連れて来て良かったの?」
「人に優しく出来ない人は、誰にも優しくして貰えない。それを身を以て体験すればいいの。」
「そっかぁ。僕もあいつ嫌い~。」
「僕たちの可愛いサクラを虐めるヤツには、お仕置きだよね~」
「僕も賛成~」
そんな事があった事など知らないサクラは、ゲームの世界で幸せそうに眠りこけていた。