第16章 執着心
「そ、それは・・・。」
「綺麗でしょう?俺が付けた婚約者への執着の証。」
因みに、今の桜は正常だ。俺の腕の中で、今は羞恥と戦っているだろう。担当者の目の前で、もう一つ赤い花を咲かせる。
世界を渡るくらい惚れた相手だ。つまらない横槍なんぞ、俺に必要ない。
「あぁ、今日の納品はそこの箱です。」
担当者はいつになく、そそくさと帰って行った。
「統也さん・・・遣り過ぎです。」
「俺は桜が心を痛める要因があるのなら、その全てを除去する。」
「その気持ちは嬉しいですけど・・・。」
「今日はいいのか?いつもあの担当者が帰ったら、俺に甘えて来るのに。って、逃げるなよ。俺とキスしたくない?」
桜は目を泳がせているけれど、決して嫌だとは言わない。そして、俺に抱き付いて来る。
「可愛いなぁ、俺の桜は。ホラ、口開けろ。」
桜の口の中に舌を入れ、慣れた様に絡み取る。応えてくれる桜を見て、執着しているのは俺だけではないのだと嬉しくなる。
きっと、結婚式を行っても俺の執着は変わらないのかもしれない。あぁ、元婚約者たちどうしているかな。上手くやっているだろうか?
同僚は店付きの娘と結婚出来た事に喜んでいるだろうし、元婚約者は優しくしてくれた男と所帯を持つことになった。
「と、統也さんっ・・・。」
「んっ?」
桜に止められた時には、桜の上服をたくし上げ下着をずらして胸の先を咥えた瞬間だった。
俺の唾液で卑猥な状況になった桜の胸。其れに満足しては、下着と服を整える。
「も、もうっ、ここは工房なのに・・・。」
「この後は、予定はないからちょっとハメ外した。心配しなくても、桜の肌を見るのは俺だけだから。」
あの担当者は、この後、別の人に変わった。俺の未来の嫁の溺愛ぶりに心が折れたらしい。俺としては、それで何より。お陰で、桜とは更に執着し合い愛が深まったと思っている。
欧米人の様に、普段からキスすることに違和感がなくなる生活を送る様になるとは以前なら想像もしていなかったのだけど。俺も桜も、それで心が穏やかにいられるのだから問題はないだろう。