第16章 執着心
女神との約束を守った後、俺は桜と同棲を始めた。桜からゲームを見せて貰ったし、手作りの俺だったキャラのぬいぐるみやアクセサリーを目の当たりにしたときは苦笑いするしか出来なかった。
桜の初めてを二度貰った後、俺の行動は早かった。再会した一か月後には、桜の家族と顔合わせ。俺の家族は、女神が用意してくれた。ゲームの世界では、そこまでの設定はなかったものな。
流石に両親しか用意出来なかったらしいけれど、必要がある時だけ会える設定となった。桜は、畑作業を嬉々として行ってはイキイキと過ごしている。
会社は潔く、すっぱり辞めた。理由は、寿退社としたから揉めることもなかった。あの男は、女神に拉致られて行った。何故か、子供を五人作る使命を与えたらしい。意味が分からない。
「トーヤさん?」
「桜・・・トーヤ呼びが慣れているのは分かるけど、今は違うだろ?」
「統也さんでしたね。」
「それで、どうかしたのか?」
「少し顔が見たくなって。」
あんな急に元の世界に戻されたんだ。不安に思うのも無理はない。そんな桜を腕の中に抱き入れる。
「顔を見るだけでいいのか?」
「そ、それは・・・キ、キスとか・・・。」
頬を赤く染め、キスを強請る桜。
「ウチも、直ぐに子沢山になりそうだな。」
「えっ?」
「コラ、後退るな。結婚式までは自重するし、俺が桜を逃がす訳ないだろ?」
桜を捕まえ、思いの丈、唇を貪った。しっかりと桜の腕が俺の背に回されて、安堵する俺。そしてこの後、当たり前の様に桜を押し倒して愛し合う・・・一連の愛情表現。
一度抱いてしまえば、後はなし崩しだ。
俺の思う通りに愛し合った後、桜は俺にべったりだ。こういうところも可愛い。
俺としては、一日でも早く本当の意味で桜を俺のものにしたい。たくさん愛し合って、明るい家族を作っていきたい。
「統也さん・・・もっと、統也さんが欲しい。」
今日は珍しい。桜からのお誘いだ。
愛らしい唇にキスを落とすと、嬉しそうにハニかむ。
「さっきの取引相手に妬いたのか?」
「だ、だって・・・。」
取引相手というのは、俺がアクセサリーを卸している会社の担当者だ。確かに、俺を色眼鏡で見ていることには気づいている。
「俺が愛しているのは桜だけだ。まぁ、そうは言っても不安に思うものは仕方ない。俺にどうして欲しい?」