第14章 夏 十三日目
今日は、村の花火大会。
「んっ・・・もう、朝?」
「あぁ、起きたか。」
「おはようございます、トーヤさん。」
「おはよう、サクラ。」
「トーヤさん、爽やかな挨拶に反して手付きが怪しいです。」
「いつもの事だろ。慣れろ。」
「ダメです。そんな事、前も言って色々大変だったんですから。」
「俺は本能に素直になっただけだ。」
言葉の通り、彼は本能に従順だ。でも、朝から夜並みに行為をされるのはちょっと恥ずかしい。だって、部屋が明るいんだもの。
「って、何で私を組み敷こうとしているんですか。ちょっ!!?ト、トーヤさっ!!?」
こうやって、惚れた弱みに付け込まれて食べられてしまう。
「抵抗なんか、無駄だろ。それに、俺に抱かれるの慣れて来たし、嫌なんかじゃないだろ。」
それを追求されると弱い。トロトロに溶かされ甘やかされるから、強く拒否出来ない。
朝なのに・・・。おかげで、朝食が美味しい。トーヤさんも晴々した顔で、朝からモリモリ食べている。
つい私も影響を受けてか、無性にトーヤさんに抱き付きたくなる時がある。と言うか、もう抱き付いている。食事中なのに。
「ん?もう、俺に甘えたいのか?ホント、サクラは俺の事が好きだよなぁ。可愛いな、俺のサクラは。」
俺のサクラと言われる度に、心が躍る。
「そんなの、今更です。」
「そうだな、今更だな。」
少し長くなった朝食を終え、畑の見回りをする。ビニールハウスには、鍵を付けた。おまけに、鐘も設置。
その後は、先に洞窟へと来た。
アレ、珍しい。イベントの日に先客がいるなんて・・・。
それが誰なのか分かって、私はトーヤさんの背後に隠れた。いい鉱石が採掘出来なかったのか仏頂面のマグが出て来た。
「朝早くから熱心だな、小僧。」
「誰が小僧だ。逆に言えば、お前はおっさんだろうが。」
「成果は芳しくなかった様だなぁ。」
これって、煽ってる?マグの顔は見えないけど、決して明るいものではないと伺えるから。
「余計なお世話だ。おっさんこそ、採掘なんかしてたら身体壊すんじゃねぇか?」
「俺が?朝から、可愛い恋人を喜ばせられる体力くらいはあるんだがなぁ?」
えっ・・・この人、何言ってんだろ。慌ててトーヤさんの言葉を止めようとしたのだけど、既に遅かった。