第2章 春 一日目
作物の水やりは備え付けのスプリングクーラーが働いてくれている。フル装備のウチの設備は、八年目にはゆとりの時間が多くなっていたんだ。
「サクラ、おはよう!!今日も朝から早いな。」
この人は、ウチに牛乳などを卸してくれているノースさんだ。家は酪農家で配達もしてくれている。年齢は二十七歳。同い年の奥さんと二歳の娘ちゃんがいる。
「ノースさん、おはようございます。お世話になります。」
「あぁ、こちらこそ。いつもの場所に荷は置いておくな。」
優しくて力持ちな人だ。荷を受け取ってから、私は村の中を見て回ることにした。馴染みの雑貨屋や工務店、医院に服屋や宿屋など顔を出してゲームで対面した人たちと挨拶を交わしていった。
食事処【紫陽花亭】で軽食を済ませては、ある工房へと向かった。この工房には、十五日目に私の推しが引っ越してくる。
「サクラ、何やってんだ?」
「ストーンさん、さっきぶりです。ちょっと見ていただけです。」
「あぁ、ここは工房だよな。その内、誰か越して来るだろ。それより、また原石を仕入れたいのだが構わないか?」
「いいですよ。」
「それにしても、畑仕事しながら洞窟で宝石の採掘までやってるなんて働き者だよな。桜が採って来る原石は、どれも質がいいから人気なんだよ。適当でいいから二・三種類頼むな。」
採掘にもレベルがある。推しに使って貰う為に頑張った結果、レベルは最高値のLV99。最初はただの石や銅や鉄鉱石から始まって、今はカラフルな宝石の原石を採掘出来ている。
高値で売れるから、結構重宝したっけ。ちょっとだけでも、洞窟に行ってみようかな。基本的に毎日通っていたんだものね。
そう、私の腕には母から貰った時計が存在していた。時間はまだ二時を過ぎた頃。洞窟に行っても少しなら採掘出来るだろう。現実の嫌だったことなんか忘れて、器具を持って洞窟へと向かった。
回廊には灯りが設置されている。採掘出来る場所は全部で五か所。一か所に付き三回しか掘れない事になっていた。きっと、この世界も同じだろう。
「何がいいかなぁ・・・やっぱり、ダイヤモンド?農具で使うオリハルコンや賢者の石ってのもあったよね。あ、ここだ。早速やってみよう。」
結果・・・ダイヤモンド五個。アメジスト三個。トパーズ二個。めのう四個。オリハルコン一個。サファイア五個。水晶三個。金二個。大量だった。