第13章 夏 十日目
今日は、トーヤさんはお仕事に行って、私は一人で畑作業である。夏の茶葉を摘んでは、機材へ入れていく。
「お茶の葉のいい香りがする。うっ、イタタ・・・腰が痛い。昨晩のトーヤさんも凄かったなぁ。」
昨晩の情事を思い出して、顔が熱くなる。
一人の人としての対応なら何も言わないけれど、どうやら私に気があるらしい相手だと執着が酷い。その見極めは、本能だと言っていたのだけど。
「後は・・・ビニールハウスで、果物の収穫だなぁ。もう少ししたら、村の花火大会があるんだよね。」
ペラっと、メモの紙を開く。
「今年の依頼はいつもより多いなぁ。レモン、オレンジ、スイカ、メロン・・・後は、小麦。この村でたこ焼きは無いからお好み焼きとかスイーツとか作るのかなぁ。さて、収穫しなきゃ。」
ビニールハウスには、最高品質の果物たちがたわわに実っている。三時間後、予定の収穫を終え出荷箱に入れておく。
「おーいっ、サクラ!!」
「こんにちは、へインさん。珍しいですね、ウチにまで来るのは。何か急ぎのご用ですか?」
「察しが良くて何より。」
彼はこの村の村長の手伝いをしている二人のウチの一人。
「サクラの依頼に、小麦があっただろ?要望の量を間違えていて、増やす事を依頼しに来たんだ。」
「今回のイベント、かなり盛大にするんですね?」
「何か、村長の従姉妹が町から遊びに来るみたいなんだ。町で仕事をしている人らしいんだけど、久しぶりに村を訪ねて来るって言ってた。結構な女傑らしくて、どやされない様にって戦々恐々してる。」
「へぇっ、そうなんですか。それで、後どれくらい必要ですか?」
メモを渡され、目を通す。
「小麦だけじゃないんですね。」
「あぁ、他のものは他の農家に頼むつもりだ。」
「分かりました。小麦なら用意出来ます。」
「助かる。それじゃ、頼んだ。」
忙しいらしく、早々に次の農家に依頼に行ってしまった。私は追加の小麦を倉庫から持って来ては、出荷箱に入れておく。
「町で働く女傑か・・・どんな人なんだろう?小麦、追加で育てておこうかな。」
小麦の種を撒いては、たっぷりの栄養をあげておく。
「茄子もそろそろ収穫時だなぁ。それにトマトも美味しそうだし。そうだ、オリーブを収穫してオリーブ油にしよう。」
料理の使い道を想像しては、再びビニールハウスに籠る。