第12章 夏 五日目
夏のイベントとくれば、魚釣りである。勿論、最高級の釣り竿を私は二つ持っている。この村は、川を下れば海が見える。参加者は、馬車に乗り合わせて海へと向かう事になっている。
荷台には一台に付き、六人ほど乗車出来る。それが三台あるのだけど・・・どうしてか、あの前のイベントで私に告白して来た男性と乗り合わせる羽目となった。
因みに、私はトーヤさんの両足の間に身体を収めている。ん?トーヤさんが私の身体の向きを変えた。直ぐ上を見上げれば、トーヤさんの顔が見える。そんなトーヤさんに更に擦り寄る。
彼はそんな私を見て、愉快そうに笑いながら頭に頬を寄せる。機嫌が良さそうだ。何か、頭にキスされているし。
「トーヤさん?」
「何だ?」
「トーヤさんと一緒にイベント参加出来て嬉しいです。」
「釣りは、一時ハマってた事があったんだ。(それに、サクラに告白した男も参加するって聞いたからな・・・)」
私は釣りも殿堂入りしているので、直接の参加は出来ないけれど代わりにトーヤさんが参加することになった。
「サクラ、まだ寝足りないだろ?着いたら起こしてやるから、それまで寝てろ。」
寝不足の原因はトーヤさんとの伽のせいだ。なので、お言葉に甘えて目を閉じる。
「トーヤさんの腕の中、幸せ~。」
そんな呑気な私を、トーヤさんはギュっと抱きしめる。
「ハハ、可愛いな。俺のサクラは。」
夏真っ盛りだけど、ここの気候は自然の風が心地よくてこんな風に人とくっついていても不快感はない。
私が眠っている間、どうやらあの告白男?にこれみよがしにトーヤさんがマウント取っていた事を私は知らない。
「・・・ラ、サクラ起きろ。」
「んっ・・・着いたんですか?」
「あぁ、着いた。」
先にトーヤさんが降りて、私を抱き上げて卸してくれた。少し恥ずかしい。
ん?何か、トーヤさんとあの告白男?との間に火花が見える気がするのは気のせいではないはず。一体、どうしたんだろう?
説明があってから、開始となったイベント。私はトーヤさんと近くの岩場へと向かった。トーヤさんは経験者だけあって、面白い様に魚を釣り上げていく。今回の評価は釣果量である。
私はその近くで、網で雲丹を掬い上げていた。そこそこの量を集められて、私はホクホク。帰ってから雲丹クリームとか作って料理に使おう。