第1章 牧場物語の世界へ
詰め寄って来るなり私のスマホを奪い取って、足元に投げ捨てては何度も踏みつけている。
「残念ですけど・・・もう、別のクラウドに送りましたからスマホを壊しても意味ないですよ?」
「あぁっ!?直ぐに消せ。でないと・・・痛い目に合うぞ?」
「脅しですか?そうですか・・・。」
時間的にまだ人がいる時間帯。私は今世最大の大声で「殺される~っ!!助けて~っ!!」と、叫んだ。
「お、おまっ、何言ってっ!!止めろ!!」
「誰か助けて~っ!!」
手で口を塞ごうとするのを拒否しつつ、叫んだ結果・・・何人かが気付いてくれて追い払おうと大声を出してくれた。
親切な第三者のおかげで何とかその場は収まった。その後、無事にマンションへと到着し・・・週末だと言うこともあって、ゲームの世界を開いた。
「あ・・・そう言えば、これで十年が終わりだ。どれだけ頑張っても、私の好きなキャラはモブ扱い。残念・・・。ん?何か、眠い・・・飲み過ぎたかなぁ?」
私はその後、何かに誘われる様に眠りに落ちた。その時、その弾みでAボタンを押していたんだ。
【十年十回目、お疲れ様でした。お礼として、この世界に行きませんか? A はい B いいえ】
どれくらい寝ていただろう?明るさで目覚めた私の視界に入って来たのは、マンションの自室ではないけれど見慣れた部屋。
「えっ、ここは・・・。」
辺りを見回し、状況を把握した。
「ゲームの私の部屋だ・・・。」
カーテンを開ければ、ゲームの中で広がる風景。窓を開ければ、自然の風が吹き抜けて行った。
「ゲームの風景と同じ・・・。えっ?私・・・ゲームの世界に来ちゃったの?」
隣接しているクローゼットを開ければ、これも見慣れた場所。その中で可愛いけれど、動きやすい服を選ぶのはゲームの影響か。
喜び勇んで家の中を探索してから、外へと飛び出した。すると、目の前に画面が現れた。
【十年十回おめでとう!!この世界は貴女のもの。自由に毎日を謳歌してくださいね。 女神より】
「女神様?えっ?やっぱり・・・これって、トリップ?だったら、楽しまなくちゃ。女神様ありがとう!!」
長い間何度も遊んだ世界だ。庭には作物が育ち、自然溢れる場所だ。現実に戻りたいか?今は、そんなのどうでもいい。何処か懐かしさを感じながら、私は先ずは散策から始めた。