第4章 春 五日目
早いもので、この世界に来て五日目。今朝は生憎の雨模様。出荷を終わらせ、今日は燻製作り。
「ちょっと欲張ったかなぁ。でも、あのハム美味しいんだよねぇ。後は、ソーセージにベーコン。肉祭りだな。出来上がるのが楽しみ。」
稼働した機材を見届けた頃、来客を報せる玄関の鐘の男が響いて来た。作業場から玄関へと向かえば、そこに立っていたのは大工のボンさん。筋肉粒々のいかついおじさん。でも、とても優しい人なんだ。ウチも作って貰った恩がある。
「邪魔するぞ、サクラ。」
「ボンさん、こんにちは。今日はどうしました?」
「急で悪いんだが、賢者の石持ってねぇかと思ってな。村に移住してくるヤツが工房で仕事するんだが、それで使う機材を作る為に必要なんだ。」
それってひょっとして・・・推しの工房?ゲームでは分からなかったけれど、確かに宝飾職人が使う機材は特別だ。推しに協力出来るのなら二言はない。
「どれだけ必要ですか?」
「五個欲しいんだ。」
「五個ですか・・・。」
「難しいのはよく分かってる。他も回るつもりだ、だからサクラが用意出来る範囲でいいから。」
賢者の石は早々に採掘出来る代物じゃない。でも、ウチには今日一個採れたから丁度五個存在する。
「いいですよ、五個なら丁度ありますから。それに新しい住人さんになる方なんですよね?だったら、協力しますよ。ちょっと待ってて下さいね。」
「流石、サクラだな。ストーンに相談したら、先ずはサクラに相談しろと言われたんだ。」
保管庫から賢者の石を袋に入れて、ボンさんに手渡した。
「まさか、一軒目で揃えられるとは思ってなかった。ありがとよ。これは費用だ。」
お金を受け取って、これで仕事に取り掛かれると意気揚々と帰って行くボンさんを見送った。
「こういう繋がりがあるなんて、面白いなぁ。今日は早い内に洞窟に行こうかな。」
ランチを取った後、私は洞窟へと向かった。ニルさんとニキさん兄弟が丁度、洞窟から出て来るところだった。
「こんにちは。ニルさん、ニキさん。成果はどうでしたか?」
「あぁ、サクラか。俺らは銀が二個にトパーズが一個。水晶が一個で他は銅と鉄だ。」
袋を見せて貰ったけれど、確かに銅と鉄が袋の大半を占めていた。雨の日は不作とかあるのかなぁ?そんなことを思いながら、二人と別れて採掘場へと入っていく。
「さて、頑張りますか!!」