第4章 VI * アルミン・アルレルト
スマホを片手にビールを呷る。
案の定、電波は圏外だった。
ビールを呷る。
今の状況に至るまでの経緯を思い返してみる。
オフィスを出た時間はいつもと変わらず、電車の遅延もなく、いつもの最寄のコンビニに寄った。
『コンビニの後……』
手押し信号を押した後、横断歩道を…
『渡っ…て、ない…?』
記憶は横断歩道に一歩踏み出したあたりで途切れていた。
『信号無視の車に撥ねられたのかな…、撥ねられる瞬間にここに飛ばされたのかな…』
は空になったビールの缶を下に群がる生き物へ投げた。
コンと良い音を響かせた缶は、生き物の額に直撃していた。
空缶と生き物の大きさの比率が、あきらかにおかしい事に気が付いた。
『何あれ……、空缶より目の方が大きかった…500缶だよあの缶!』
額に缶を当てられた生き物の顔に、じりりと怒りが滲み出している。
フィクションに慣れすぎて、現実味が薄かったのだ。
群がる生き物や置かれる状況に、ここにきてはじめて恐怖を抱いた。
これは地獄でも夢でもないのかもしれない。
『私あれに食べられるのかな…嫌だな…』
頭から齧られれば、あまり痛くないかもしれない。
手足から食べられたら、そんな想像に身震いがする。
『なんでこんなことに…』
は広い荒野を呆然と見つめた。