第4章 VI * アルミン・アルレルト
夢見る年齢はとうに過ぎたし。
白馬の王子様なんて存在しない事も知っている。
でも、せめて、誰か1人の1番になりたかった。
『………なんて、思わず辞世の句っぽいものを思い浮かべてた…』
なぜそんな言葉を思い浮かべたかと言えば。
見た事もなければ、登った記憶すらない。
"この木なんの木"も驚くであろうほど大樹の枝に、はちょこんと腰を掛けていた。
枝といっても、寝転がって左右に2回くらいは寝返りを打てそうなほどに大きい。
『やっぱり私は…死んだのかな?』
見渡す限りに広がる荒野、腰掛ける枝から数メートル下には、人の形を模した不気味さを存分に振るう謎の生き物が群がっていた。
『だとするとここは地獄?』
しかしながら、天国に行けるほど徳を積んではいなくとも、地獄に落ちるほど不道徳な行いはおろか悪事も働いた事はない。
適度に真面目には生きてきたはずだ。
だとすると…。
『あれかな…、流行りのあれかな?』
先日、アマゾンキンドルで大人買いをしたものを思い浮かべる。
異世界転生をし王子達やバリエーション豊かなイケメン達を選り取り見取り、キャッキャウフフするコミックスやラノベだ。
しかし実際にの下に群がるのは、顔のパーツの感覚も身体のバランスも、とても個性的な謎の生き物の群れ。
『あはは…ある意味選り取り見取りィ…』
これではまるで、捕まったらスプラッタ上等のホラーゲームじゃないか。
樹の幹に背中を預け、エコバックを漁る。
帰宅途中にコンビニで買ったものが入っている。
『コレがあると言う事は…やっぱり異世界なんちゃら的なやつなのかな…』
はエコバッグからビールを取出してぐっと呷った。