第1章 Ⅰ*エルヴィン・スミス
エルヴィンの仕事がやっと落ち着きをみせた頃、リヴァイとハンジが自宅に訪れてきた。
お酒と料理を渡されて、とハンジはテーブルに並べる。
あの頃と同じ4人でテーブルを囲んだ。
2人の結婚祝いだ。
募る話が多すぎる4人だ。
遅くまで飲み明かすと思いきや、リヴァイもハンジも早々と代行を呼んで帰宅して行った。
エルヴィンはに先にバスルームへ行かせる間にテーブルを片付けた。
バスローブに身を包み出てくると、エルヴィンもバスルームへ向かう。
エルヴィンにとっては待ち望んだ時がやっと訪れたのだ。
その空気感に気恥ずかしさもあるし、嬉しさもある。
けれど少しだけ怯んでしまう。
エルヴィンがバスルームから戻ると、下半身にバスタオルを巻いたままだった。
夢では見慣れているけれど、実際に目の当たりにするのではワケが違う。
しかしの目が捉えたのは、エルヴィンの右腕に残る痕だった。
巨人に咥えられた右腕を、エルヴィンを守るために自身が斬り落としたものだ。
『右腕…』
「あぁ…生まれつきの痕だ」
『私が斬り落とした…』
「がつけた痕ならたまらないな、…それに今は両腕で抱ける」
エルヴィンは彼女を横抱きにすると、ベッドまで運んだ。
『え、エルヴィン、あの…』
「嫌か?」
ベッドにそっとを下ろして、ゆっくりと覆いかぶさる。
髪を撫でて、頬を撫でて、優しく口付ける。
バスローブの紐を解いてはだけさせると、背中に両腕を滑り込ませ抱きしめた。
隻腕では満足に抱きしめることも出来なかったエルヴィンは、また自分の両腕の中にがいる喜びに、伝わるぬくもりに打ち震えていた。
「…やっとだ、やっと抱きしめることができた」