第2章 すれ違い(及川)
青葉城西高校一年バレー部。そこに最近、凄いセッターが入部した。しかも、とてもイケメンだなんて囃し立てられてから数ヶ月。そんな事に全くの興味なんて無かった。だって、小さい頃からずっと好きな人が居たから。どうでもよかった筈だった。…筈だったのに。
「ねぇ!今日バレー部の練習、見に行ってみない?」
「えー、興味ないんだけど…。」
「いいじゃない、イケメン後輩くんとやらを見に行こ!ね?」
「わ…わかったよ、引っ張らないで!」
仲のいい友人に鞄を引っ張られそのまま引きずられるようにしてクラスを飛び出る。私、年下には特に興味が無いのだけれど…。しかも今日バイトあるし早く帰りたい。そんな願いを友人が聞いてくれるわけもなく、足はどんどん体育館を目指し進んでいく。近付くに連れて増える女の子に、嫌な予感しかしなかった。
「うーわー…凄い混みようね。」
「じゃあもう帰ろうよ…。」
「いいや!まだ二階が空いてるじゃない!そこに行くわよ!」
「はいはい…。」
本来なら窓を開閉するためにつけられた二階への階段を上がる。それでもやっぱり人は多くて、掻き分けながら進んだ。そんなに人気なのかしら、その後輩くんは。やっと落ち着いた位置に着いた所で、広い体育館を見下ろす。そこには確かに、一際目立つ茶髪の男の子が立っていた。
「あれあれあの子よ!今サーブ打とうとしてるあの…」
「……徹?」
「そう、及川…あれ、知ってたの?」
スラリと伸びた長身に、程よくついた筋肉。地毛の癖に綺麗な茶髪に見るからに女にモテそうな甘い顔立ち。全てに、見覚えがあった。だって彼は私の……
「幼馴染、なの。あ、一も居る。」
「え…。えぇえ!?あんたあんなイケメンの幼なじみ居たの!?」
悲鳴の如く驚きの声を上げた友人の口を、慌てて塞いだ。幼なじみといっても、仲良かったのはせいぜい小学生まで。中学は当然違かったし、成長していくに連れて疎遠になっていたんだもの。彼はきっと私を覚えてなんていない。…離れていた間もずっと、好きだったけれど、もうほとんど会うことが無いと思っていたし会ったとしても、きっと会釈をする程度だ。そう思っていた。