第2章 いい湯だな、あははん
「じゃあ私、これ売って何か食べ物と交換してもらってくるから、その間にお風呂の用意しておいて」
「いけません主!俺たちの為に私財を投げ打つなど!!」
「いや、こうなったのも全部私の所為だしね。じゃ、ちょっくら行ってくるわ!」
それだけ言うと、時空転移装置をもって朔夜はさくっと江戸時代にやって来た。
手っ取り早く質屋でもやっていれば良いのだが、もう夜も遅いし市井までは距離がある。これは近所に点在する農家を訊ねるしかなさそうだ。
朔夜は月明りを頼りに何軒か家を回って、野菜や穀物と着物を交換してもらった。本当なら米が欲しいところだが、贅沢は言ってられない。
取りあえず交換できる着物は全て食料と交換すると、朔夜は早足で本丸へと戻った。
「たっだいまー!!」
「おかりなさい、あるじさまー。おふろのよういができてますよー」
「折角大将が帰って来たんだからな。これ位はさせてもらわないとな」
「ありがとう薬研~」
薬研の黒髪をなでなですると、今剣が「ぼくもぼくもー」といって飛び跳ねた。それを見ていると、なんだかこの本丸に帰って来たのも悪くない気分になってくる。
「――まあこれで良い気分にならなかったら、ただの人でなしですけどね」
「って、こんのすけっ!だから勝手に人の心を読むな!!」
「ははは、人非人は人には含まれませんよ。まあ、冗談はさておき、食事が終わったら皆さんに提案があります」
「提案?」
「まあ、それは後で。先に食事にしましょう」
こんのすけの不穏な言動はさておき、着物と交換してきた野菜を使って、長谷部が早速腕を振るって料理を作ってくれた。
決して豪華と言えない料理だったが、他の4振り達は久しぶりの暖かいご飯だと喜びの声を上げた。その声を聞いて、自業自得とは言え朔夜は胸が痛んだ。
ならばせめてもの罪滅ぼしとして、出来る事があれば何でもしようと朔夜は心に決めた。
長谷部が作ってくれたご飯をありがたく頂くと、今度はこんのすけの提案を聞くため再びみんな輪になった。
いったいどんな話だろうと耳を傾けると、こんのすけは開口一番とんでもないことを言い出した。