第2章 いい湯だな、あははん
「畑はどうしたの?あれがあれば食うには困らなかったでしょ?」
何の気なしに朔夜が尋ねると、5振りと1匹が揃って重いため息を吐いた。
「恐れながら主、貴女がいなくなってから本丸自体に霊力が回らなくなり、土地がやせ、作物も育たなくなったのです」
「それにどんどん仲間が減っていくから、あのデカい畑を維持するだけの労働力が無くなってさ。今じゃ雑草しか生えてないよ」
「……そ、そうですか。そうとも知らずに、すみません、すみません。生まれてきてすみません」
「謝る前に、これからどうするかって話をしようぜ」
土下座して謝る朔夜に対し、薬研が建設的な提案をした。やはり兄貴だ、頼りになる。これからは敬意を表して薬研の兄貴、略してヤニキと呼ぼう。
とにかく一同は今後の話をするため、比較的まだ荒れていない部屋に集まった。
「やっぱ食料だよな、朔夜も戻って来たし」
「ねえこんのすけ、こういう時って政府から援助金とかでないの?生活保護みたいな」
「出ませんよ。図らずして貧困になったわけではありませんからね」
「わあ、シビア~。でも私が戻って来たから、一応政府から補助金は出るんでしょ?」
「出ますよ。偶数月の15日に」
年金かよ!って、思わず突っ込みそうになった朔夜だった。
いや、それはひとまず置いておいて、取りあえず目下の食料難をどうにかしなければ。
折角あばら家だった本丸に審神者が戻って来たのに、腹が減って霊力を回復できず一家(?)離散とか超笑えない。
「よし、取りあえず着物を売ろう!」
「もう売った」
「じゃあ資材を売ろう!」
「それももう売った」
「装備品を――!」
「全部質に出した」
こ、これほどまで貧窮していたとは……。そう言えば皆の服装を見てみると、寒そうな着物1枚だ。よし、こうなったら私の物を売ろう。
朔夜はその場で荷物を漁り、売れそうな着物を何着か取り出した。ここでテコでもゲーム機を手放そうとしないのが朔夜の朔夜たる所以である。