第2章 いい湯だな、あははん
「たっだいまー!!」
「おかえりなさーい、あるじさまー!」
実家の両親の反対を押し切り、命よりも大切な携帯ゲーム機やその他もろもろと共に、腐っても主である東雲朔夜がほぼ家出同然の力技で本丸に戻ってくると、5振りの刀剣男子達――特に今剣が嬉しそうに笑顔で迎えてくれた。
「ねえあるじさま。もうずっとここにいてくれるんですか?」
「うん、ノートPCもスマホもタブレットもゲーム機も全部持ってきたから、ずっとここにいるよ!!」
「せやかて、ここ電気通ってへんで?」
明石の一言に、朔夜の笑顔が凍りついた。
――え?待って、電気が通ってない?じゃあ充電はどうすればいいの?……って言うかその前に、薬研がここ2日碌に食べてないって言ってたけど、食料とかその他諸々もいったいどうなってるんだろう。
うっすらと冷や汗をかきつつ、朔夜は引きつった笑顔で尋ねた。
「ねえ、皆。刀剣男子ってご飯食べなくてもいいんだよね?」
「それはゲームでの話です。実際は違います」
「うおッ!居たのかこんのすけ!?」
このツッコミに特化した子ぎつねのこんのすけ。コイツだけは朔夜の霊力ではなく、あくまで政府から派遣された神霊だからぴんぴんしているが、目の前の刀剣男子5振りは見るからにやつれている。
でも確かに5年前、この本丸に来たばかりの頃は皆でご飯を作って、皆で食べるのが当たり前だった。当たり前すぎてスッカリ忘れていた。
「うぅっ、そうか。みんな趣味でご飯食べてたんじゃないんだね」
「そうです。それに貴女の居なくなった本丸では誰も霊力を補完できなり、幾ら付喪神である刀剣男子と言えど食物から直にエネルギーを得るしかなくなったのです」
自分の都合で皆を捨てて出て行った朔夜からすれば、相変わらず耳の痛い話だ。
しかし待てよ、ちょっとおかしい。この本丸には自給自足出来るだけの広い畑があるから、こんなに痩せ細ることはない筈なのだが……。